LOCOMEDIAN

メディア・コミュニケーションを地域のチカラに変える ロコメディアン

「地元を映画に!」は夢じゃない。NET CINEMAが実現する映画による地方創生とは

2018/05/14

「地方創生×映画」で地域の魅力を再発見

地域PR手法として存在感を高める「動画コンテンツ」。自治体がさまざまな工夫を凝らして世に送り出す作品が、時にSNSやメディアを騒がせる例も多くなってきました。そんな中、IoTスクエアでは「地方創生×映画」で地域の魅力を再発見し、制作過程でのコミュニケーションを通じた地域の活性化を目指す取り組みを続けています。

なぜ映画なのか? 自治体を主体とした映画制作の現場とは?
IoTスクエアの平湯さん、山林さんに聞きました。

映画というフォーマットだから、低予算が実現できる


IoTスクエアは、データセンタービジネスの先駆者としてインターネットを支えてきたブロードバンドタワーグループの一角。映画制作の原点は、まだインターネットで動画を見ることもままならなかったブロードバンド黎明期に遡るのだとか。
「将来の高速通信時代を見据えて『いずれ映画をネット経由で楽しめるようになる』と考えた現・当社取締役 大和田廣樹が『NET CINEMA(ネットシネマ)』のビジネスを始めたのが2002年のことです」

(C)株式会社IoTスクエア

——劇場公開ではないNET CINEMAですが、出演陣はすごく豪華というか、メジャーな役者さんも多いですよね。そうなると、気になるのは制作予算なのですが…。

「たとえば企業CMへの出演となれば、役者さんへのギャラは数千万円クラスになることも珍しくありません。一方、企業色を出さず、あくまで『映画』としてのオファーだと、金額的には1/10程度の予算感で相談することも可能になります。
監督、プロデューサーの人選、映画の尺(長さ)、DVD化といったパッケージを整備し、映画というフォーマットの中に企業やサービスをプレイスメント(小道具や背景として実在する企業名・商品名を表示させる手法)することで、映画制作へのハードルを大きく下げることができたんです。

企業ブランディングを中心に3年あまりで100本近い映画を制作しましたが、リーマンショックやIT企業の混乱などもあり、NET CINEMAは一時中断しました。しかし今年、サービス開始から15周年を迎えるにあたり、もっと社会性のあるテーマでNET CINEMAをあらためて盛り上げていきたいと思っています」

「善意がつながる現場」から、地方創生映画が生まれた


社会性のあるテーマとは何か? 沖縄でシナリオハンティングをしていたNET CINEMAの生みの親でもある大和田氏は、偶然うるま市の勝連城復活プロジェクトの現場に出合います。

「ボランティア精神で復活プロジェクトを立ち上げた方の姿に心打たれた大和田が、頼まれてもいないのに脚本を書き上げて持っていったんですね(笑)。その情熱に現地の方も感動してくれて、有志の方による制作費の募集が始まりました」

——見返りを求めない、善意の情熱が大和田さんを動かし、善意が大きく繋がっていったわけですね。

(C)株式会社IoTスクエア

prime video で観る


地域のために頑張る人から善意が繋がっていき、“お金ではないもの”で動く力が生まれていく。これは、コンテンツの新しい生まれ方、作り方だと思います。
『ウチには映画になるようなネタはない』と思われるかもしれませんが、地域には必ず、そのような善意を持った方がいて、そのような現場にこそコンテンツの種があると思っています」

映画の表現手法が、地域の良さを引き出す


——プロモーションビデオ(PV)ではなく、観光PR動画でもない。「映画」というストーリー性のあるフォーマットに乗せることで、地域の魅力はどのように表現できるのでしょう?

「PVに代表される短尺の動画では、短い時間の中にインパクトのあるシーンを入れる必要があるため、どうしても派手なハプニングやアテンション系の要素が必要になってきます。
一方、映画は2時間の長尺です。主人公たちの悩みがあり、壁があり、それを乗り越えていくドラマを丁寧に描くことができます。物語性と人間性を描くために、映画は非常に優れたフォーマットなんですね。
また、テレビでもおなじみの役者さんが、日本の”とある町”にいるという映像が、不思議とムービージェニックなんです。すごく絵になる」

(C)株式会社IoTスクエア

——テレビなんかだと撮影セットも大がかりで「作られた世界」という感じが強いですが、すごくリアルに「役者さんがそこで生きている雰囲気」が出せるのが魅力ですね。

「地元の方にエキストラで入っていただいたり、言葉や風習、食べ物や建造物など、地域の魅力が自然と映画の中にプレイスメントされるので、見終わった頃には『ここに行ってみたい!』という気持ちがとても強くなるんです」

完成した作品だけでなく、制作過程も地域活性のきっかけにしてほしい


——実際に映画を作るとなると、制作費の捻出はもちろんのこと、自治体内部でもさまざまな制作への協力必要になってくると思います。

「そうですね。自治体様や地域のご担当者の存在は、作品の完成度を左右する重要なポイントになります。プロデューサーと担当者が意気投合し、二人三脚で制作にあたることが重要になります。
制作中にはエキストラの募集や撮影場所の管理、施設とのさまざまな調整も必要になってきます。ただ、それを作業と捉えず、映画作りの過程そのものを自治体全体で楽しんでいただきたいと思っているんです。映画作りそのものが絆になり、新しいコミュニケーションを生んでいく。完成した作品も大切ですが、その過程で生まれた発見や関係性を、地域のチカラにしていく視点が大切なのかもしれません」

Locomedian View

映画制作を低予算で実現し、地域のチカラに変えていく。紹介した沖縄県うるま市の事例をはじめ、さまざまな自治体の地方創生映画が多数制作されています。
IoTスクエアでは今後、漫画家が地方に移住して作品を生み出す『ふるさとコンテンツ』事業も進めていく計画なのだとか。映画制作と同様、現地との血の通ったコミュニケーションを核に、地域の新しい魅力を発掘する手法として注目していきたいと思います。

(C)株式会社IoTスクエア

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この記事の著者

有賀 久智(あるが ひさとも)

Locomedian 編集長/株式会社shiftkey メディアプラン担当

長野県安曇野市(旧 豊科町)出身。「有賀」の読みは、長野県を除いたほとんどの地域で「ありが」であるため、名刺交換のたびに「アルガさんなんですね」と少々驚かれ、「長野の方言みたいなものなんです」と説明している。
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