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“リタイア移住”は過去のもの!? 「移住したい県 No.1」長野県が注目する3つの移住ニーズ

2017/01/20

銀座四丁目の交差点からほど近い「銀座すずらん通り」を行くと、落ち着いたたたずまいのビルが見えてきます。ここは「銀座NAGANO」。2014年10月のオープンから3年目を迎えた、長野県のアンテナショップです。
アンテナショップというと、名産品の物販が中心というイメージ。ここ銀座NAGANOも1階部分はショップスペースになっており、“健康長寿県”である信州の郷土食や銘酒を購入することができます。一方、注目したいのは同じビルの4Fに設けられた「移住交流・就職相談コーナー」。今回は、長野県の移住促進を担うこのスペースにお邪魔して、移住の現場について聞きました。

アンテナショップの真の姿は、信州移住の情報発信拠点だった

エレベーターを降りると、「長野県 移住・交流センター」の看板が目に入ります。この日も、設けられた移住相談、就職相談のブースでは、移住推進員や就職支援ナビゲーターの方が、来場者の相談にアドバイスをしている真っ最中。
平日の昼間でしたから、正直なところ、「相談に来ている人はいるんだろうか」という気持ちもあったのですが、想像以上に活気あふれる空間。スタッフの皆さんも、応対や電話にお忙しい様子です。

今回は、銀座NAGANOの移住促進活動について、竹鼻栄二次長にお話を伺いました。

平日の昼間でも活気のある相談コーナー。どのくらいの人が訪れているのでしょうか。

「2016年度(11月時点まで)では、778名が移住相談に訪れています。2015年度の実績では1211名ですから、月あたり概ね100名の方にお越しいただいていることになります。2014年10月のオープン以来、3年目に入ったところですが、首都圏にお住まいで長野県への移住ニーズのある方に対して、一定の認知をしていただけてきたのかなと感じています」

それでは、実際にどんな移住ニーズがあるのでしょうか。

変わってきた「移住ニーズ」 現役世代を動かす3つの動機とは?

竹鼻さんは、「ここ数年で地方創生や移住が注目されるようになって、移住ニーズが多様化してきた」と指摘します。それまで中心だったのはリタイヤ世代のセカンドライフ的な移住。「悠々自適な老後を、自然豊かな信州で過ごしたい」というニーズに代表されるものでした。

一方、ここ数年では
子育てニーズ
手に職を持った(ノマドワーク的)ニーズ
ひとり親家庭支援ニーズ
の3つのニーズで訪れる人が増えているといいます。

子育てニーズは、いま都会に住んでいて、小さいお子さんがいるご家族が、『やはり子育ては自然の豊かなところで』と移住を検討されるパターンです。長野県は“健康長寿県”というイメージもあるので、自然志向、健康意識の高い方が長野県を候補にするケースは多いのかと思います」

「二つ目は、現在のお仕事も続けながら移住をされるケースで、デザイナーやWeb系など、手に職を持っていて働く場所がそれほど限定されない方などが、積極的に移住を検討されるようになってきました。ノマドワーク的ニーズともいえるかもしれません。長野県内でもコワーキングスペースなどを活用して、IT系の技術を持つ方々が集まっているようなワーキングスタイルも増えてきました」

「もう一つ、県として力を入れているのがひとり親家庭の移住支援です。東京などの都市部ではなかなか近隣との繋がりもなく、仕事をしながら子育てをするのが難しいという状況があります。長野県では移住した方が“地域の中での子育て”に溶け込めるような受け入れ体制の整備を進めていますので、興味を持っていただけるケースは増えています」

これまで、ある意味で「シニア向け」だった移住という選択肢が、より若い「現役世代」の積極的なアクションになってきている様子。「移住をポジティブに捉えている方が増えている」と竹鼻さんは語ります。

『田舎暮らしの本』で11年連続No.1! 移住ブランド地の実力とは

実は長野県は、首都圏における「移住したい県No.1」の県でもあります。

「田舎暮らしの本(宝島社)」2017年2月号より

「先日発売された宝島社の『田舎暮らしの本』2月号でもランキングがありまして、11年連続で移住したい県総合No.1になりました。理由としてはやはり、地理的な条件に恵まれているのは大きいと考えています。
軽井沢~佐久エリアは北陸新幹線で首都圏まで1時間程度でアクセスできますし、中央道方面では茅野~諏訪エリアも人気があります」

やはり、移住の上で重視されるのはアクセス性。移住前の生活圏には、家族や仕事の繋がりが残ることを考えれば、優先順位が高くなるのは当然といえるでしょう。

「数時間で都市部に出られるということは、逆に言えば『ほんの数時間で自然豊かな環境でのライフスタイルが手に入る』ということでもあります。
また、移住するといっても、都市部に親御さんがいて『いざという時には駆けつけられるようにしたい』という現実もあります。そういった意味でも、“ちょうどいい距離”にあるのが長野県なのかもしれません」

Locomedian View

取材を通じて感じたのは、私たちが思っていた以上の「移住に対する潜在ニーズの力」でした。

  • 銀座NAGANOの移住交流・就職相談コーナーの活気
  • 年間1000人を超える移住相談者

このような実績は、「移住したい県No.1」の貫禄の一端かもしれません。
とはいえ、長野が誇る都市圏からの地理的条件の良さに頼っているわけではありません。県をあげた移住支援体制をはじめ、県内のさまざまな市町村が移住体験ツアーを実施。銀座NAGANOのイベントスペースでも、定期的に移住関連イベントを開催しています。

移住、体験ツアーに関連する資料も豊富

ここ銀座NAGANOでは、

  • 1Fのショップスペースでの興味喚起、ファン作り
  • 2Fのイベントスペースでのイベントを通じた魅力のシェア・興味の深化
  • 「コアな長野県ファン」の最終的な選択としての移住フォロー

といった、カスタマー・ジャーニーが、1つの導線としてつながっていることがわかります。

その導線のキーワードになっている「シェア」というキーワード。
詳しくはInsideの記事「オープンから3年。“シェア”をコンセプトに、コアな長野県ファンを育てる「銀座NAGANO」の取り組みとは」でご覧ください。

この記事の著者

有賀 久智(あるが ひさとも)

Locomedian 編集長/株式会社shiftkey メディアプラン担当

長野県安曇野市(旧 豊科町)出身。「有賀」の読みは、長野県を除いたほとんどの地域で「ありが」であるため、名刺交換のたびに「アルガさんなんですね」と少々驚かれ、「長野の方言みたいなものなんです」と説明している。
長野県関係者に遭遇すると、テンション20%増し!


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地方創生イベントレポート「JOIN 移住・交流&地域おこしフェア」 Vol. 1