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オープンから3年。“シェア”をコンセプトに、コアな信州ファンを育てる「銀座NAGANO」の取り組みとは

2017/01/20

銀座四丁目の交差点からほど近い「銀座すずらん通り」に、落ち着いた佇まいのお店が見えてきます。2014年10月にオープンした「銀座NAGANO」は、長野県の郷土食やお酒を求めるお客さんで人気のアンテナショップ。
しかし、名産品の物販だけをやっているわけではありません。充実したイベントを通じて、移住促進にまでつながる「銀座NAGANO」のミッションに迫ります。

「健康長寿日本一」のライフスタイルを体現する店内。利用者の長野県に対するイメージは“想像以上”だった

お話を伺ったのは、銀座NAGANOの竹鼻栄二次長。まずは「銀座NAGANO」を訪れる方の印象についてうかがいました。

「1Fのショップスペースに足を運ばれる方は、ミドルエイジの女性を中心に、本当に幅広いですね。銀座や丸の内周辺に勤務する方、東京に観光でいらっしゃる方、外国の方も含めて多くのお客様にご利用いただいています。
また、長野県は“健康長寿日本一”の県として取り上げていただくことも多く、商品のラインナップも健康長寿を支える食材等を豊富に取りそろえています。そのようなライフスタイルに関心の高い方々に、リピーターになっていただいていますね」

ショップのセンターには、自慢のNAGANOワインや日本酒と郷土食を味わえるバースペースも

「2014年のオープン以来、3年目に入ったところですが、私たちが考えていた以上に『長野っていいよね』というイメージを持っている方が多いことに、うれしい驚きを感じています。交通アクセスが進歩したこともあり特に首都圏にお住まいの方にとって、『自然豊かな郊外』というイメージが定着しつつあるのかもしれません」

年間400超のイベント! リアルコミュニケーションが「信州をシェアする」というコンセプトを形にする

1日中客足が途切れないショップスペースは、県内商品の人気を裏付けているといえるでしょう。
一方で、注目したいのは「銀座NAGANO」のキャッチコピーである「しあわせ信州シェアスペース」というキーワード。「シェア」というコンセプトは、どのようにスペース作りに生かされているのでしょうか?

「シェアという言葉に込めているのは、『モノ・ヒト・コト』をトータルに体感していただくことによって、継続的に信州との接点を持っていただくという、『銀座NAGANO』の目指す価値にあります。一過性のお付き合いではなく、“関係地”として、末永くお付き合いできる場所でありたいと思っています」

その意味では、1Fのショップが「モノ」ですね。

「1Fのショップスペースも人気ですが、『銀座NAGANO』を最も特徴付けているのは、2Fにあるイベントスペースです。本日(取材時)は軽井沢のイベントを行っていますが、ほぼ毎日、多彩なイベントを開催しています。イベントを通じて『ヒト・コト』をシェアしようと取り組んでいます」

確かにイベントカレンダーを見てみると、日替わりペースでイベントがずらり。このラインナップを常に運用していくのはかなり大変そうですが…。

「長野県内には77の市町村があり、北海道に次いで全国2位の多さです。ですから、県が実施するイベントのほか、日替わりで市町村のイベントをやったとしても、それぞれの枠はそれほど多くありません。
さらに、東京・銀座の、しかも現在のようなロケーションにスペースを確保することは容易ではありませんので、県内のさまざまな企業や団体からの引き合いも非常に強いものがあるんです。スペースを使いたい要望が多く、“順番待ち”のような状態になることもあるほどです」

なるほど。日替わりで行われる多彩なイベントで、長野県の「ヒト・コト」がシェアされているんですね。

「私たちがこの銀座で目指しているのは『コアな信州ファンを作る』ことです。
まずは1Fのショップで買っていただき、興味を持っていただく。興味があるイベントがあれば参加し、併設するインフォメーションコーナーで、『旅する・行ってみる』というアクションを促す。そして、深くファンになっていただいた方に対しては、4Fの移住交流・就職相談コーナーで、信州で暮らす未来をお手伝いさせていただく。
フロアを上がるたびに、信州との『関係性』が深まるような構造を意図しています」

取材時に行われていた「軽井沢アートフェス」。軽井沢彫の体験も行われていた
イベントスペースに併設される観光インフォメーションコーナーには、信州について深く広い知識を持つベテラン職員が配されている
県内のさまざまなパンフレットが一堂に会する様は、さながら図書館のよう。イベントが行われていない時間帯は、カフェスペースとなり、好きなパンフレットをその場でじっくりと楽しむこともできる

必要なのは「お互いにとって必要な関係づくり」。“観光地”から“関係地”になることが大切

最後に、東京の中心地で「長野県・信州」を発信するスペースとして、今後どのような取り組みをしていくかをお聞きしました。

「2014年のオープン以降、1年目は『まず知ってもらう』ことを。2年目は認知を広げて『訪れてもらう』ことを目標としてきました。3年目に入った現在、信州を訪れ『関係』を作った方を、コアなファンに育てることを目指していきたいと考えています。

一方、そこで必要なのは、特別な施策ではなく、現在のイベントを通じた『関係作り』を着実に継続していくことではないかと思います。『銀座NAGANO』では、“観光地から関係地へ”というコンセプトも掲げています。

地方創生について語られるとき、地方の問題が大きくクローズアップされますが、都市もやはり問題を抱えています。地方と都市それぞれが、『お互いにとって必要な関係作り』を進めて行くことが、よりポジティブな地方創生の原点になるのではないでしょうか」

Locomedian View

「銀座NAGANO」の中を歩いていると、「コアなファン作り」のための体験をしっかりと提供できていることが実感できます。
1Fのショップではスタッフの方が“旅人をもてなす”ように気さくに話しかけてくれて、銀座にいながら信州の土産店にでも行った雰囲気があります。
そして2Fでのイベント体験、4Fには“コアなファン”を次のフェーズ「移住」につなげるという自然なカスタマー・ジャーニーが実現されているように感じます。
Outsideの記事「超一等地のローカル戦線! 銀座・有楽町のアンテナショップから探る地方創生メディア戦略」でも触れていますが、年間1000人を超える移住相談件数の裏には、「銀座NAGANO」全体の巧みなカスタマー・ジャーニーの設計があると思えます。

もう1点は、年間400を超えるイベント数を複数年にわたって続けている「高い継続力」に驚かされます。ひとつのイベントは参加者数10~20名単位ですが、それが何百回にも積み上がれば、延べ参加者は数千人になります。
リアルなイベントでつながった「ヒト」は、長野県を「関係地」として見るようになる可能性も高いでしょう。

都市における都道府県ブランドの発信において、「銀座NAGANO」の取り組みは非常に参考になる事例といえそうです。

この記事の著者

有賀 久智(あるが ひさとも)

Locomedian 編集長/株式会社shiftkey メディアプラン担当

長野県安曇野市(旧 豊科町)出身。「有賀」の読みは、長野県を除いたほとんどの地域で「ありが」であるため、名刺交換のたびに「アルガさんなんですね」と少々驚かれ、「長野の方言みたいなものなんです」と説明している。
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